2017年4月1日土曜日

マスタリングについて考えてみる。


 ここでは私のマスタリング方法を簡単に説明します。
 最後にオンラインマスタリングのお試しもしてみました。

 はじめに。

 私はDAWを使わない録音スタイルで制作をしています。
 そのためPCを使って曲作りをされている方からすると、考えられない方法をとっている部分もあるようです。
 というのも、直接耳で聴いてみて”こっちの方が良い”という試行錯誤を繰り返しすことで考えを定着させてきたからだと思います。

 その昔、マスタリングについて話しをしました。
 FL Studioのmastering について
 
 このときから比べると考え方は変わってきているので、この機会に再度まとめたいと思います。
 また、2年後、3年後は今回の説明とは違う方法で制作しているかもしれません。しかし、何かを作り出す時の基本的な流れは変わらないと思いますので、その変わらない基本的な部分を中心に書いていきたいと思います。




 /// そもそもマスタリングとはなにか? ///

 定義としては、、、
 ミキシング(ミックスダウン)して作られたマスターから、曲順の決定や、フェードイン・フェードアウトなどのクロスフェード作業、最終的な曲のレベルや音質、音圧調整、曲間の編集等を経て、マスターとして完成させるうんぬんかんぬん・・・。

 wikipedia:マスタリングより。

 ようするに、、、
 リリースするために必要な作業、っとザックリ言ってみる。

 厳密に言うと、私のような人が自宅でするマスタリングはプリマスタリングというらしい。そして、音圧音圧と念仏のように唱えている方がおられるように、音圧上げもマスタリングの工程のひとつとされています。
 そして、マスタリングの世界は良くわからないというのが曲作りを始めたころの私の勝手なイメージで、いまでも”幽霊は存在するのか?しないのか?”というレベルであやふやな世界だと思っています。これが正解!というのがない世界です。いや、幽霊はいないでしょ!?。

 けっきょく、そんなあやふやなまま完成させてきた私の曲たちですが、ともかくマスタリングで悩むより曲を作ることに悩みたいと考えているわけです。
 適切な言葉をさがすと・・・

「マスタリングについては開き直っている」
 があてはまります。

 しかし、開き直りつつもそれなりに理想に近づいているのでは?と感じています。
 曲作りを始めた頃から制作方法を教えてもらったわけではなく、何度も繰り返していく中で、自己流の制作方法を生み出してきました。いま考えるとたぶんこの方法は私にあっていたのかもしれません。

 以前、海外アーティストのワークショップでマスタリングについて質問をしたとき、マスタリングには2種類の考え方があって、
 1つは音圧を上げることで多くの人に注目されたいという考え。
 もう一つはダイナミクスを大事にしたいという考え方。
 ということだそうな?

 私はもっぱら後者の考えで、大きい音で聴くなら再生装置のボリュームを上げればいいと思っています。
 しかし、それなりに音圧を上げないと聴こえないというのはあるので、私はリリースするときには音圧上げをがんばっています。




 /// 自己流マスタリング ///

 ここではアルバムを作る前提で話しをします。


・音量バランス

 最初は音量バランスを見ます。
 単体、1曲だけのリリースなら特に考える必要はないのですが、アルバムの制作やEP(ミニアルバム)を基準に考えると全体の音量バランスを調整する必要があります。
 これはアルバムという性質上、全曲を通して聴くときに曲と曲の音量バランスが悪いと、そのつどスピーカーのボリュームをコントロールする必要が出てくるからです。これでは聴くのが面倒になります。
 極端な例ですが、一時期のテレビCMがそれで、CMが始まるとやかましい音楽が流れてテレビのボリュームを下げる、CMが終わるとテレビのボリュームを上げる、という流れがあったように全体を通して大変聴きづらいものになります。

 ところで、曲によっては同じ音量に聴こえる曲でも、PCのアナライザーなどを通して見るとレベルが違う、なんてことがあります。こんなときは違和感のないレベルで音量をそろえるようにしています。


・音質の調整

 Aという曲はフルデジタルでキラキラした曲。
 Bという曲はアナログ録音で倍音をたくさん含んだ曲。
 この2つの曲がつながると、、、
 やはり違和感を感じてしまいます。
 いや、それが狙いです!というのなら別ですが・・・。

 もしRemixを依頼することがあれば、こういった音質の違いをどうするのか?悩むことがあるかもしれません。私はFLのマルチバンドコンプ(以下”FL Studioを使ってのマスタリング”で解説)にサーチレーションを強めにかけて音質を調整しています。(DAWのみで制作された曲はあきらかに倍音が少ないため)


・曲と曲とのつなげ方

 曲が終わってから次の曲が始まるまでの間を何秒作るのか?
 私はだいたい2秒前後とるようにしていますが、曲によっては長くなったり短くなったりします。長さの基準ですが、だいたい16ステップを曲のテンポにあわせて1ループさせるくらいの長さにしています。

 この考え方には例外があり、フェードイン&アウトで曲が終わるスタートする場合は上よりも長くとることが多いです。




 /// 音圧上げの前に /// 

 ここから本格的に音圧上げについて説明をしますが、その前に重要なことがあります。というよりも私はマスタリングよりも重要なことだと考えています。

 それはミックスについてです。

 私の録音方法はDAWを使わない1発録音になるため、このミックスという作業が重要になってきます。

 ながれとしては、、、

 機材
 ↓12in (4Mono/4Stereo)
 アナログミキサー(VLZ)
 ↓(2ch Stereo)
 マスターEQ
 ↓(2ch Stereo)
 PCMレコーダー(録音)

 ザックリとこんな感じです。
 つまり録音をしてPCに入れる段階では、もうミックスダウンを完成させないといけないことになります。
 たとえばマスタリング中にKickの迫力を出したいと考えます、しかしもうその段階では遅いと言えます。EQを使えば多少の調整は出来ますが、Kickを前に出してくれば当然ベースも前に出てきて全体のバランスがおかしくなります。もし、ミックスダウンをもう一度することが出来ないならその曲はそこで終わりです。というのが私の録音スタイルです。

 ここでのミックスについてですが、低域を中心にどう処理するのかをいつも考えています。というよりも、ほとんどの場合は低域処理からスタートすると思いますが?。


・Kick(BD)の設定。
 普段はKickにだけインサートでコンプをかけていますが、曲によってはかけないこともあります。かける場合は基本的にアタックを拾う感じでかけることが多く、あまり強く圧縮することはありません。簡単ですが録画をしました。


 流れとしてはINを最大にして、THRESHOLDとRATIOを強めにかけてからアタックとリリースを調整し、最後にTHRESHOLDとRATIOを違和感のないレベルに戻すという流れになります。このようなコンプのかけ方をしておきますと、最終のマスタリング段階でKickの輪郭をはっきりさせることが出来ます。
 もう少し詳しく説明しますと、アタックはKickの”パツン”というアタックを拾うようにかけ、リリースはKickの”ブーン”というリリースを持ち上げるようにかけています。
 私が作りたいKickはマシンで作られた感のある不自然なKickです。


・EQ
 これはTR9090(TR909クローン)のKickのEQですが、Acidlab Miami(TR808クローン)の場合はMID EQをセンターに戻します。

 ただし、これをライブハウスやクラブでやると店の方が驚きますので気を付けましょう。

 こちらはxOxbOx(TB303クローン)の設定ですが、左は控えめで右は前に出したいときの設定です。右の設定ではマイクプリの歪みを利用し、Low Cutのスイッチを入れることで全体的に乾いた印象の音に仕上げています。

 Kickとベース以外のEQを触ることはありませんが、もし触るとしたらLOW EQを少しカットするくらいです。こうすることでKickやベースが前に出てきます。




 /// FL Studioを使ってのマスタリング /// 

 私が普段使っているマスタリングソフトは以下の4種類。

 ・Fruity parametric EQ

 狭いQ幅でピークをカットするときに使います。
 上で紹介したマルチトラックによるレコーディングをしないため、ここでのEQのカットには注意しています。というのも、アナログミキサー(Mackie VLZ)についているEQは3つだけなので細かなカットが出来きず、ミックス段階で不要な音をEQでカットするという作業が大雑把なものになるからです。


 ・Fruity parametric EQ 2

 上で紹介したEQの進化版ですが、特定の周波数域で0:00~0:00の間だけカットしたいなど、オートメーションを使ってEQ処理をするときに使います。
 欠点を言うとFruity parametric EQより少し重いことです。


 ・Maximus

 Image line リンク
 https://www.image-line.com/plugins/Effects/Maximus/
 マスター用として使用していますが、普通にコンプやリミッターとして使えます。万能なのですが理解するのが難しい面もあります。あとでMaximusの使い方についての詳しい紹介をします。


 ・VoxengoSPAN

 このVoxengoSPANですが、私が使っているのはバージョンが古いタイプです。使い慣れているのでこちらを使っていますが、最新版でもフリーです。
 https://splice.com/plugins/1022-span-au-vst-by-voxengo


 以上、紹介したソフトですがVoxengoSPAN以外はFLStudioを購入したときについてくるソフトです。
 https://www.image-line.com/flstudio/

 FLはWin対応ですが、macにも対応する方法はあるみたいです。
 https://support.image-line.com/knowledgebase/base.php?ans=114
 上のリンク先ではBoot Campをすすめていますが・・・。
 もう何年も前からこの話はありますが、まだ正式にmac対応ではないみたいです。しかし、2017年になって正式にリリースするのでは?とのうわさがあります。
 もうWinをずっと使い続けているので、いまさらMACに乗り換える理由が見当たらないのですが、、、。




 /// Maximusの使い方 ///

 Maximusは3Bandマルチコンプですが、必要十分な機能を持っているのでマスターとして使うには十分だと考えています。

 まだなれないころは、マスタリング前の圧縮作業だけで1週間以上もかかっていたのですが、今では10分もあればほぼ完成に近い形が取れるようになりました。というのも、このMaximusだけをひたすら使い続けていたからでしょう。
 世の中には数多くのマスタリングソフトがありますが、けっきょくMaximusに使い慣れてしまっているのでなかなか他のものに手を出せないでいます。


・低音処理


 4つ打ちテクノは低音が命、っと考えているのは私だけかもしれない。低域の処理がホント難しいんですが・・・。

・↑では手をつける順番に番号を付けました。

 一番左にSOLOスイッチがあり、低音の確認ではここを押したり押さなかったりと頻繁に使います。

 1は右一杯に回していますが、こうするとモノラルになります。真ん中の位置ですと変化無しのノーマルで、左に回すとステレオ感が増します。私の中では低域をモノラルにするのがデフォルトになっています。Tranceなど広がりのある曲を作るときは、だいたい2~3時のあたりまで戻すこともあります。

 2はミックス自体に問題がなければ特に触ることが少ない場所になります。

 3のTHRESは左右どちらかに回すと倍音を増やしてくれます。低域では基本的に3時のあたりまで回しています。逆に左に回すと音が前に出てきますが、音の輪郭がぼやけてしまいます。

 右にあるCEILはアナログデバイスのピークを再現したもので、ようするにアナログ感を出すために必要なものです。しかし、私はそもそも録音スタイルがアナログなのでここの設定にはあまりこだわっておらず、いつもノーマルの設定のままです。もし使うとすれば、2でゲインを上げて音を突っ込んだ分をCEILで押さえ込み、THRESでバランスを見るという感じで使うといいでしょう。

 次に4、5、6、7ですが、ここはいわゆるコンプレッサーセクションです。リズムのイメージを作る重要な部分になりますが、この場面で圧縮をしても変化がわかりにくいと思います。なれないうちはSOLOを押して2でPREを強めに入れて確認し、確認後に元に戻すという方法で聴くのがいいかもしれません。


 流れとしては、4(AHEAD)を60~80%くらいかけて圧縮具合を確認し、徐々に減らしていき違和感のない部分を探して位置を覚えます。その次にまた4(AHEAD)を60~80%に上げて6(ATT)の良い場所を探します。曲のテンポやベースの入り具合で変化しますが、私は少なめで取ることが多いです。6(ATT)の処理のイメージとしてはリズムのアタックを拾う感じでするといいでしょう。
 最後に4(AHEAD)を最適な場所に戻し、5(REL)を右一杯に上げてから徐々に下げていきリズムにあわせます。そして5の下にあるCARVEを8にして徐々に下げていき微調整をしていきます。

 ところで、このセクションにはCURVEというものがあって1~8まで選択できます。2つあるうちの左の数字は6(ATT)と7(REL2)のカーブを決めるもので、右の数字は上の5(REL)のカーブを決める数字になります。数字が大きいほどカーブが緩やかになり、圧縮具合が穏やかになります。
 6(ATT)のCURVEの数字の違いでどのように変化するのか、わかりやすいようにSSを撮りました。左はCURVEを1にしたときで、右はCURVEを8にしたときです。


・2種類のリリースカーブ
 

 ところで?問題になるのは5と7の2種類のリリースのうちどちらを使うのか?ということですが、5(REL)は加速カーブで、7(REL2)は減速カーブという違いになるためそれぞれで使い分ける必要があります。当然、両方使うことも出来ます。
 違いがわかりやすいようにいくつかSSを撮りました。

 最初にRELのリリースでCURVEは1の場合です。

 次にRELのリリースでCURVEを8にした場合です。

 これはREL 2のリリースでCURVEは1の場合。

 こちらもREL 2のリリースですがCURVEを8にした場合です。

 4つとも同じテンポで記録しましたが、REL2は最後まで圧縮が残りやすいという見方が出来ます。

 簡単な曲を作りLOW(低域)のRELとREL 2以外の設定を変更しない、という条件で2つのリリースの違いを比べてみました。(わかりやすいように強めにかけています)

 まずはRELのリリースの場合で、設定は以下のとおりです。



 次にREL2のリリースの場合です。

 
 聴いてわかるとおり、RELと比べてREL 2はKickが張り付くように聴こえてリリースを残しますが、もたついているようにも聴こえます。その代わりRELはKickの歯切れが良くて跳ねるように聴こえます。
 私の中ではRELは音数の多い曲で使用して、REL 2はMinimalなどの音数の少ない曲で使用するという使いわけで落ち着いていますが、当然2つとも使うこともあります。実際に聴いてみてどちらが良いのかを聴き比べるのが重要です。



 続いて8は、3バンドコンプ(LOW・MID・HIGH)のうちどの周波数帯で処理するのかを決める場所になります。私の場合は使用する機材が固定されているというのもあり、8については自分でデフォルトをつくり、SOLOスイッチを押して調整するというスタイルで定着しています。低域はだいたい150~200、高域は3kHz~4kHzを基準にしています。
 そして下にあるのは分離の大きさを調整するスイッチですが、12dB・24dBに分かれていて、曲を聴きながら12dBが良いのか24dBが良いのかを判断します。
 もしここで設定が変わる場合は2に戻って再度設定を微調整します。
 基準としては、Kickの重さを強調したい場合は12dBでベースとKickをなじませたいときは24dBを使います。


 補足をしますと、コンプセクションの次にあるLMH DELとLMH MIXですが、私はここを触ることはありません。

 9(Low Cut)ローカットについては、30Hz~40Hzの間でCutします。
 クラブなどで鳴らす時は48HzCutあたりから低音に物足りなさを感じますが、イヤフォンなどで聴く時は、LowCutは強めのほうが聴きやすいことがあります。こればかりは用途に応じて妥協するしかありません。


・中域と高域



 ほとんどの場合、中域と高域では低音のようにコンプセクションに手をつけることはありませんが、左右の広がりや倍音を加えるかどうかなどを考えて、サーチレーションやゲインの調整をします。やはりここでも実際に聴いてみて良い音を探すのが一番です。上のSS2つが私の基本設定です。

・MASTER

 最後はマスターの設定です。

 一番よく触るのが1と2で、1のサーチレーションはアルバム前後の曲のイメージによって調整しています。THRESを左へ最大にすると曲全体が歪んでしまいますが、そういった曲を求める場合はアリだと思います。CEILはそのままにします。
 2の設定ですが、LOW(低音処理)で紹介したコンプセクションの設定よりも短いリリースとアタックにします。そして、AHEADは弱めにかけて、LOWで作り出した音を拾い上げるイメージに仕上げます。このときのPEAKとRMSのうちPEAKを必ず使います。




・・・ オンラインマスタリング ・・・

 ところで?
 最近よく目にするオンラインマスタリングサービス。
 ネットの広告でよく目にするのですが、これは昔からあるマスタリングサービスとは違って、スタジオに行かずにクラウド上で音源のやり取りをし、そこからマスタリングを依頼するというもの。

 その中でも全自動でマスタリングをするサービスがあるというのを最近知りましたが、早速試してみることに。こういったのはすぐに試したくなる性格です。

 一番よく目にするのがここ。

 でっ!?上でも使った曲ですが、マスタリング前の音量を上げただけの状態です。
 

 次に上の曲をLANDRにUPして高音圧でマスタリングです。(低音圧・中音圧・高音圧の3択が出来る)
 

 こちらは私のマスタリングです。
 

 私のマスタリングと比べてLANDRのほうはリズムが跳ねるように聴こえます。全体的に軽快でポップな感じに仕上がっていると言えますが、最近はこういったのが流行っているのでしょうか?良い経験になりました。

 「マスタリングは良くわからないし面倒だ」という方なら使う価値はあると思います。
 
 


・・・ 最後に ・・・

 マスタリング作業で重要なことを簡単に言いますと、、、

 「具体的な答えはなく経験と妥協のバランス」
 なんてことが私の結論になっています。

 それでも、より良い音に仕上げたいという考えで、たまにはいつもと違うスピーカーで聴いてみたりしています。(クラブで聴くのがベスト)

 他の方がこの記事を見て参考になるのか?ならないのか?わかりませんが、何かのきっかけになればと思います。